ELISAの標準曲線を吟味するのに適したプロッティング               若林克己

 

標準曲線の吟味は標準曲線を観察することから始まります

ELISAの標準曲線は標準品濃度を横軸に,吸光度を縦軸にとります.
 この際,吸光度とは原則として発色試薬がTMBであれば450 nmの吸光度から620 nmの吸光度を差し引いたものを意味します.620 nmの吸光度はウェルの底の厚みの不均一性や傷などを補正する意味があります.
 さらに,Blank(標準品濃度ゼロ)のウェルの吸光度を差し引いたものをその標準点の吸光度として扱います.
 ELISAでは標準品濃度は等比級数的に設定する事が殆んどです.
 もしも等差級数的に設定すると,狭い濃度範囲しかカバーできません.特に低濃度領域をフォローすると高濃度領域までカバーするのは困難になります.
 また吸光度のバラツキの絶対値は吸光度に比例して大きくなるのですが吸光度に対する相対値それほど大きくは変化しません. そのため標準品濃度は等比級数的に設定したほうが良いのです.
 標準品濃度が等差級数的になっているのなら縦,横軸共にノーマルスケールで描いた標準曲線は吟味の役に立ちますが,標準品濃度を等比級数的に設定すると,縦横共にノーマルスケールで描いた標準曲線は図のように低濃度領域が狭く,或いは重なってしまうのです.これでは低濃度領域の吟味はできません.
 

 
横軸を対数,縦軸をノーマルスケールにすると標準点間の横の距離は広がるが縦の距離は低濃度領域では狭く,その形からは標準点の並び方の異常を見つけることが困難で,これまた吟味の役には立ちません.
 
 
 
そこで縦,横共に対数スケールとすれば各標準点はどこでも等間隔に近い距離で並びます.従ってこのような軸の取り方で標準点をプロットすれば吟味が可能になります.

ところがひとつ問題があります.
 両軸を対数目盛りに変換して3次多項式で近似曲線を描かせてみると,それらしい曲線は得られるのですが上の図では低濃度領域,特に標準点1の座標にフィットしていません.たいていの場合,低濃度領域がフォローされていないのです.これは測定系が異常だという訳ではなくEXCELの欠点が露呈したのです.
ご注意下さい!
 EXCELでは軸のスケールを変換しただけでは,回帰曲線の計算に使われているデータ(標準点の座標)までは対数変換されていないためなのです.良くフィットする近似曲線を得るためには,この方法ではいけないのです.

 座標を対数変換してから改めてグラフを描き,近似曲線を3次多項式で描かせてみると,

(pmol/L) Ln(conc) (pg/mL) Abs.450(⊿620)nm mean. ⊿Blank LN(⊿Blank)
10.0 2.3 94.3 1.736 1.743 1.740 1.637 0.493079081
5.00 1.6 47.2 1.170 1.168 1.169 1.067 0.064522896
2.50 0.9 23.6 0.670 0.651 0.661 0.559 -0.582411139
1.25 0.2 11.8 0.402 0.401 0.402 0.299 -1.206275453
0.625 -0.5 5.88 0.237 0.234 0.236 0.133 -2.014403146
0.313 -1.2 2.94 0.177 0.168 0.172 0.070 -2.656406968
0.156 -1.9 1.47 0.146 0.143 0.145 0.042 -3.159192823
B/G   B/G 0.105 0.099 0.102  


このように良くフィットするのです.
 チェックすべきことは,全ての標準点が3次回帰曲線の上に並んでいるか否かです.回帰曲線は全体の標準点の座標から計算されますから,すべての標準点がその上に乗っている事が望ましいのです.ひとつだけ外れている場合にはその標準液に関して,或いはその標準液を加えたウェルの処理に関して何らかの異常があったと考えるべきでしょう.このような場合,その標準点の座標を除外して回帰式を求めると良いのですが,アウトライヤーが1点だけの場合には標準曲線全体に与える影響はそれほど大きくないのでそのまま計算に用いても良いほどです.アウトライヤーが何点もある場合には最小二乗法で回帰式を計算する際にそれぞれの標準点の座標に重み付けを行う方法もありますが,標準液の希釈系列作成上のミスやアッセイ手法を反省する必要があります.
 特に初心者の場合,Blankの吸光度が最低標準品濃度の吸光度よりも高くなってしまう事があります.Blankの吸光度が高くなる原因はBlankのウェルの位置が2個ともウェルプレートの端に位置していることでエッジ効果(エッジ現象とも)を受けやすくなる事が考えられます.このような場合の対策としては,Blankのウェルをプレートの端に置かないように標準曲線系のウェル配置を考えることでしょう.例えばプレートの右端を標準曲線用にしてみるとか,ウェル全部を使わない場合には左端のウェルのストリップを外してしまい,2列目から使用するなどです.もしもそのようなことをせずにBlankの吸光度が高すぎた時にはBlankの吸光度を差し引くことをしないで標準曲線を求め,試料の吸光度もBlankを差し引かずに測定値を求める他無いでしょう.結果的には測定値は変わらないはずです.Blankの吸光度を引いて標準曲線を求めることの利点は,低濃度領域で標準曲線の勾配が改善されることに尽きるのです.

作成 081015
 
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