ELISAとは? ―易しい解説―                            若林克己

 

ELISAは免疫学的測定法のひとつです

ELISAは抗体を使った免疫学的測定法(イムノアッセイ,Immunoassay)のひとつです.正式には,Enzyme-linked immuno-sorbent assay と言います.「酵素と関連した免疫吸着体測定法」という意味です.酵素免疫測定法と言葉も使われますが,ELISAのほうが一般的です.
抗体は生体にとって異物である抗原が体内に入ることによって免疫反応を起こした結果,作られるタンパク質です.
抗体はタンパク質としてはイムノグロブリン(Ig)に属します.
イムノグロブリン(Ig)にはG(IgG),M(IgM),A(IgA),D(IgD),E(IgE),のクラスがあります.イムノアッセイで使われる抗体は主としてIgGです.
IgGは分子量約14万6000の糖タンパクで,H鎖(分子量約5万)2本とL鎖(約2.5万)2本から構成されています.
抗体はそれを作った原因となった抗原とだけ結合する性質(特異的結合能)を持っています.
抗原とは,1)抗体を作る性質(immunogenicity)があり,2)かつ抗体と特異的に結合する性質(specific binding)を兼ね備えた物質です.一方,抗体とは結合するが抗体を作る性質を持たない物質はハプテン(hapten)といわれています.一般的にはタンパク質のように分子量の大きいものは抗原となる性質を持っています.それに対して分子量が1000以下の例えばステロイドホルモンのようなもの,或いはオリゴペプチドのようにタンパク質と同じくアミノ酸がつながって出来ていてもアミノ酸の数が少なく,したがって分子量が小さいものは抗体を作れず,ハプテンの性質を持っています.ハプテンは抗体を作らないのになぜ結合する抗体が存在するのかという疑問が起きますが,実はハプテンを大きなタンパク分子(担体といいますが)と結合させて免疫すると抗体が出来るようになるのです.
免疫学的測定法とは,目的とする物質とだけ結合する,優れた特異的結合能と,ごく微量の物質でも結合出来る,強い親和性を持つ抗体を結合試薬として利用した測定法なのです.

ELISAは抗体と酵素を使った測定法です

ELISAでは抗体をどう利用するのか?
ELISAでは通常96のウェルを持つマイクロプレートを使います.
先ず,抗体をウェルの表面に吸着させ(コーティング,coatingとか固相化とも言います)て置きます.この抗体はキャプチャー抗体といって,測定対象物質である抗原を捉えるために使われるのです.抗体は大雑把に言ってY字形をしていると考えられます.Yの先端の部分が抗原を認識し,結合する可変領域があります.抗体がウェルの底面に吸着するのは吸着しやすい柄の部分です.ウェルの材料はポリスチレンが主体で,もともとタンパク質を吸着し易いのですが構造を色々考えて特に吸着しやすい素材になっています.これに抗体の溶液を加えると自動的に吸着が起こるのです.出来るだけ多くの抗体を吸着させることによってごく少量の抗原でも捉えることが出来るようになります.
A to Z 01

では,キャプチャー抗体をどのように使うのでしょう.
模式図を使って説明しましょう.
ここでは画面の都合上,抗体が1個しかついていないように描かれています.
実際は数多くの抗体が吸着されているのです.
 

 

 

A to Z 03ウェルに固相化された抗体に抗原を含む溶液(標準液,または検体,測定試料)を加え,抗体に抗原が結合するまでの時間,通常は1-2時間,放置します.
結合が終わったら,余分な液を捨て,ウェルを洗います.こうすると固相化交代に結合した抗原だけがウェルに残ります.
次に,抗原のキャプチャー抗体が認識する場所(エピトープ)とは異なるエピトープを認識する抗体(第二抗体と言います)を加えます.しばらく放置します.この第二抗体にはあらかじめ化学的に酵素を結合させてあります.
加えられた酵素標識第二抗体はキャプチャー抗体に結合した抗原を認識し,それに結合します.その後余分な酵素標識第二抗体を洗い流します.
次に,酵素の色原性基質の溶液を加え,酵素反応を行わせます.色原性基質は酵素の作用を受けて色素に変わります.
そこで反応停止液を加え酵素反応をとめてから,色素の呈色を96ウェルマイクロプレート用の比色計で測定するのです.こうしてキャプチャー抗体に結合した抗原の量が色素として測定できることになります.比色定量の結果は,吸光度(アブソーバンス,absorbance)として表現されますので,標準品の測定結果から横軸に抗原濃度,縦軸に吸光度をとることによって検量線が描かれ,測定試料の吸光度から試料中の抗原量を計算するわけです.図に示したELISAの実施方法は,もっとも単純な方法です.酵素の分子量はかなり大きいので,この方法の場合,抗体に酵素を標識すると抗体の結合能に立体障害などが生じる可能性があります.

A to Z 04

そこで別なタンパクに酵素を結合させて抗体に対する立体障害を少なくする方法が考えられました.図のように,第二抗体はビオチンで標識します.ビオチンは分子量が非常に小さい物質です.
ビオチンとはもともと生体に存在する生理活性物質ですが,これと非常に強い親和力で結合するタンパク質が卵白の中に含まれていてアビジンと呼ばれています.このアビジンに酵素を結合させ,抗原と結合したビオチン標識第二抗体と反応させれば,立体障害を克服できます. ELISAではこのような改善方法も用いられています.
ELISAは,抗体-抗原―抗体の形になるので,サンドイッチ法とも呼ばれています,つまり抗体がパンで抗原をハムと考えるわけです.

シバヤギキットで使用している酵素と色原性基質

シバヤギのキットでは通常ペルオキシダーゼと言う過酸化水素を分解する酵素を使用しております.ペルオキシダーゼにはいくつかありますが,ここではHRPと呼ばれる西洋わさび(Horseradish)由来のペルオキシダーゼです.その主な性質を次の表に要約しました.

ペルオキシダーゼ(Hydrogen peroxidase,Horseradish peroxidase,HRP)
反応 色原性基質+H2O2 ⇔酸化型色素+2H2O
起源 西洋わさび(Horseradish)
分子量,至適pH 40 000, pH 6.5
基質特異性 色原性基質(水素供与体)については特異性はない.
過酸化物としてはH2O2, CH3OOH, C2H5OOHのみ
阻害剤と活性化剤 阻害剤:CN,S,F,N3(抗凝固剤として用いられるフッ素イオンと
保存料として用いられるNaN3に注意!)
安定性 乾燥,冷蔵状態で数年間,水溶液で冷蔵1年間安定

ここでひとつご注意願いたいのは,検体に存在する可能性のある阻害剤です.ペルオキシダーゼの阻害剤は,表にあるようにCN,S,F,N3です.特に血液試料を採取するときに採血管がフッ素やNaN3でコーティングされているものを使用することがあります.
ELISAでは検体を抗体と反応させた後で洗浄しますから,阻害剤が決定的な酵素活性抑制を起こすことはないのですが,洗浄後僅かに残存しているものが酵素をいくらかでも抑制すれば,発色の低下となって現れる可能性があります.これらの採血管は使用しないことが望ましいのは言うまでもありません.抗凝固剤としてはヘパリンをお使いください.
シバヤギキットでHRPの色原性基質として使用されているのは,
TMBと言われる3,3’,5,5’-テトラメチルベンチジン(3,3’,5,5’-Tetramethyl benzidine)です.
前表にありますように,HRPによって過酸化水素が分解され,生じた活性酸素がTMBを酸化します.この結果できた色素は反応を停止するように加えられた硫酸酸性下で450 nmに吸収を持ち,黄色を呈します.

吸光度の測定

そこで吸光度を測るには,TMB由来色素の吸収波長の450 nmでの吸収を測定します.
ウェルの均一性や,キズなどの影響をキャンセルするために,副波長として620 nmの吸光度も求め,450 nmの吸光度との差を真の吸光度として扱います.
吸光度とは,比色定量の基盤となる,光の透過と溶液中の物質濃度との関係を示す,
ランベルトとベールの法則(Lambert-Beer’s low)によって決められる数値です.
吸光度 = log10(Io/I) = εlc
Io:入射光, I:透過光, ε:モル吸光係数, l:吸収層(cm), c:濃度(M),
つまり,入射光に対する透過光の割合,即ち透過率の逆数の対数が吸光度(absorbance)です.例えば光が10%しか透過しないときには,100/10 = 10,log10 = 1となります.50%の透過率では,100/50 = 2,log2 = 0.301です.
ランベルトとベールの法則では,この吸光度が溶解している物質特有のモル吸光係数と光の通る路(光路)の長さ即ち吸収層及び物質のモル濃度の積となることを示しています.従って,特定の物質を同じ長さの吸収層で測定すれば,吸光度はその物質の濃度に比例する,と言うことになります.ELISAでの物質(色素)の濃度は抗体に結合した抗原の量に比例した酵素の作用の結果ですから,前に述べたように,横軸に標準品濃度,縦軸に吸光度を採って検量線とすることが出来るのです.

(以 上)
 
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